自分で世界が切り開けるという、漠然とした期待を抱けるようになったのはいつからだろう
理不尽に殴られるのを待つだけでないと、そう思えたのはいつからだろう
そもそも、自分が感じているこれが、「苦しみ」や「悲しみ」、「傷つき」、「痛み」であると、はっきりと認識できるようになったのはいつからだろう
苦しい
今日も、苦しい
痛い
身体も、胸から溢れてきそうなこれも、全部痛い
悲しい
悲しい、悲しいよ
それでも生きていかねばなるまい
そう思えたのはいつからだったか
どれだけ人生が蹂躙されようとも
生きていこうと思えたのは
いつからだっただろうか
常々、苛まれるのは、自責の波への乗りこなしの困難さ
すぐに飲まれては、息ができなくなる
ああ、苦しい
助けてくれ
でも、このあとに「逃げ出したい」が続かない
飲まれている間、そこから脱出できるイメージを、そもそも持たないためだ
孤独の暗闇
人との関わり
点滅する街灯の如く
明滅しながら私を照らす
ときどきだけど
それでも、明るく照らされた時の記憶が、暗闇の中で歩みを止めない原動力となってくれている
他者と
私が
分かり合えたら
私が
誰にも見せない奥の奥を
あなたがちゃんと拾い上げて眺めてくれたら
ちゃんとここまで歩いてきたことを
少しは誇らしく思えるのだろうか
私は
あなたはまた、こともなげに
それをさらりとおこなってしまうのか
それともまた別の時みたいに
ただかたくなに拒絶してくるのか
ああ、分かられたい
誰に?
私が理解したいと本気で思った人に
そうすれば、もっと、あなたのことがわかるだろうか
ああ
喉が渇く
干上がってくる
蛙のように、そのままほねとかわになる
しかしそうしてアスファルトのごみになって
そのまま散り散りに、この肉体ごとなかったことにできるなら
いっそそれが一番うれしかった
湖は人工的で
そこに水を注ぎ込む流れもまた、勝手に、意識的に、拵えられたものだ
そこから蛙が跳ねてくる
道路に二百三百と跳ねてくる
それを自動車が次々潰す
ただの生き物の移動のために、そうやってただ飛び出てきただけの蛙が
みな轢き殺されていく
私はただ、親に乗せられて塾へ向かっていただけなのに
それをするたび蛙は潰される
その道は蛙の臓物がそこかしこにこびりつき
さらなる大雨で、すべて流される
すべて湖に流され、何も知らない蛙たちの住処へと返されていく
彼らが何を認識することもなく
私は蛙が怖い
私が加害者であり
また私もそうやって轢き潰される側だからだ
でも、あの蛙たちだって
逃げるも何も、雨で自分たちの領野が広がったと、ただその身体に備わる機能に従って飛び出てきただけなのだ
それなのに
ああ
ああ
助けてください
それも嘘
早く潰されたい
ぐちゃり、という音を潰した側に感覚されることなく
何十何百のうちのどれか、と認識されることもなく
でも私のそのような願望に関係なく
目の前がただ広がっていくから
私は跳ねていく
蛙にも備わっているから私にもそれが脳に埋め込まれていただけのようだ
私が跳ねていく
跳ねることができるから